朝日新聞がスクープした「森友学園事件」(※asahi.com参照)は、瞬く間に世間の耳目を集めた。国有地を9割引もの破格の値段で買受けていたのだ。話題になって当然だろう。
『日本会議の研究』著者である菅野完氏の元にも報道各社から取材申し込みが多数あったという。それも当然だ。同書では、学校法人森友学園と同法人が運営する「塚本幼稚園」に触れていたからだ。そうした経緯もあって、著者の菅野氏は急遽大阪に飛び、取材を重ねたところ、衝撃的な事実に遭遇したという。
「いや、今回は我が不明を恥じます。これまで私は間違っていた。認識が甘かった。その間違いと認識の甘さについて謝る。本当に申し訳ない」
SPA!編集部からの電話に、菅野氏は開口一番こう言った。
いったい、なぜ?
「いやね、これまで僕は、『日本会議の研究』の中でも、そのもとになった『ハーバービジネスオンライン』での連載「草の根保守の蠢動」の中でも、森友学園の運営する塚本幼稚園について、『軍歌を歌う幼稚園』と表現してきたじゃないですか。しかし、これは誤りだったと言わざるをえない。完全な誤りなんです。
確かに塚本幼稚園では、子供に軍歌を歌わせる。教育勅語も朗唱させる。日の丸を掲げさせ、君が代を歌わせる。しかしそれは、この幼稚園の抱える本当の問題じゃなかった。確かに特徴的だけど、それは『教育方針』や『カリキュラム』に類することで、それを問題と思うのなら、通わせなければいいだけの話になる。塚本幼稚園は私学であるし、幼稚園は義務教育ではないのだから」
それでは、菅野氏が目にした「本当の問題」とは何だったのか?
◆目の前にいた「被害者」
「今回僕は、取材を重ねて、塚本幼稚園が実際にどのような「教育手法」で子供と保護者に接しているのか、数々の証言を拾うことができたんです。塚本幼稚園の呆れた実態に愛想を尽かし自主的に退園した人、副園長からいきなり電話がかかってきて『明日から来るな』と言われ強制的に退園させられた人、塚本幼稚園の近隣住民、大阪府下の幼稚園業界に詳しい人物などなど、証言者の属性はさまざまなんですよ。そうしたさまざまな立場の人が数々の証言をしてくれたんだけど、全ての証言は一つの疑惑を告発していたんです」
その「疑惑」とは何なのか?
「『塚本幼稚園で行われているのは、愛国教育ではなく、児童虐待に類するものではないか?』ということです。
ある退園保護者はこう証言してくれました。“ある日、『弁当に犬の毛が入っていた!』と、弁当の中身を捨てられたんです。登園に使うカバンも『犬の毛がついてる!臭い』と言われ、捨てられました”。このご家庭への嫌がらせはそれだけに止まらない。教育熱心なご家庭で、子供の将来を考え、お子さんを中国語のレッスンに通わせていたそうです。『中国語のレッスンを受けさせてる話をしたら、態度が急変して嫌がらせが始まったんですよね。レッスンのある曜日に、帰りのバスに乗せてもらえなかったり。副園長からなんども怒鳴り声で電話がかかってきたり……』」
この副園長こそ、今、各種メディアがこぞって報じている「私は差別はしませんが、韓国人と中国人は嫌いです」の手紙を認めた張本人である籠池諄子氏(諄子は通名。本名は真美)だ。森友学園の理事長・籠池泰典(泰典は通名。本名康博)氏の妻にあたる。
退園保護者や近隣住民、そして幼稚園業界関係者が共通して指摘するのは、この籠池夫婦の「暴力的」とも言っていい言動だ。前出の「犬臭いを理由に弁当やカバンを捨てられた」などまだ序の口に過ぎない。そしてこうした暴力的な言動は、保護者だけでなく、園児たちにも向けられていると証言者たちは語る。証言者たちの言葉を信じるならば、「塚本幼稚園で行われていることは、児童虐待だと言わざるを得ない」と結論づけるしかない。菅野氏はそう感じたという。
『週刊SPA!2月28日号』掲載の「[軍歌を園児に歌わせる幼稚園]保護者が語った呆れた実態」では、菅野氏が取材で聞き集めた塚本幼稚園で繰り広げられる児童虐待まがいのエピソードの数々をルポとして報じている。
<取材・文・撮影/週刊SPA!編集部>