今年、風疹が流行している。国立感染症研究所の調査によると、2008年以降、年に400人以内だった患者が、9月26日時点ですでに約1669人と3倍強まで増加している。しかもその内訳は、20~40代の男性が6割強を占めている。一体、なぜ? そもそも風疹って、どういう病気だろう。
「風疹はウイルス感染症のひとつ。感染すると、発熱、発しん、首の辺りのリンパ節の腫れなどが起こることがあります」(国立感染症研究所・感染症情報センター・多屋馨子さん)
咳や会話などでウイルスを含む飛まつが飛び、それを吸い込むと感染するというのが主な感染経路。空気感染ではないので、ウイルス排泄者が約2m以内にいなければまず感染はしないという。ちなみに、発熱するのは感染した人の約半数程度だという。ということは、そんなに心配することはない?
「そんなことはありません。自分がかかったときよりも人にうつした時に大きな問題が起こることがあります。風疹は、妊婦さんが妊娠初期にかかると先天性風疹症候群の赤ちゃんを出産する可能性が高いのです。風疹を社会が一体となって予防するべき一番の理由はここにあります」(同)
先天性風疹症候群の主な症状は、白内障または先天性緑内障、先天性心疾患、難聴などだ。母親に風疹の症状がみられた場合、赤ちゃんの感染確率は、妊娠1カ月で50%以上、妊娠2カ月で35%、妊娠3カ月で18%、妊娠4カ月で8%程度だという。
「問題は、ウイルスの潜伏期間が2~3週間なのに、発症して自覚できる1週間前から人にうつってしまう点です」(同)
つまり、いつどこで感染したか自覚のないまま人にうつす可能性があるというわけだ。では、どうやって予防すればいいのだろう?
「予防接種以外に方法はありません」(同)
なんと、なかなか手ごわい相手のようだ。そして、今年、20~40代の男性を中心に流行している原因は、予防接種の歴史と関係している可能性が高いという。風疹の予防接種が法律で定められたのが1977年。以来、何度か法改正が繰り返されるなか、予防接種を受けなかったり、受ける機会が少なかったりした世代の男性が、今年感染している層に相当するのだという。また、風疹は一度かかれば免疫ができてかかることはめったにないが、似た症状の別の病気を風疹だと思っていたというケースも少なくないそうだ。自分が免疫を持っているかどうか不安な人は、病院でチェックして、陰性ならワクチンを受けたほうがいいかもしれない。
(2012.10.11 ヤフーニュースから転載)