快眠・快食・快便は健康の基本として、「早寝早起き朝ごはん」に「朝うんち」の標語を追加し、生活指導に取り組む小学校がある。自宅の洋式トイレに慣れた子供たちは小学校の和式トイレに慣れず、排便を我慢しがち。良い排便習慣の確立には家庭だけでなく学校の努力も欠かせない。
◆オープンに指導
「学校で排便を我慢しなくなったことで、勉強に集中し、給食もたくさん食べるようになった」と、岩手県遠野市土淵町の市立土淵(つちぶち)小学校(児童数82人)の中村説子校長は話す。
昭和53年築の校舎にあるトイレは和式。タイル貼りの床は汚れがたまりやすく、なかなか臭(にお)いが取り切れない。
そのため、「小学校のトイレぴかぴか計画」のCSR(企業の社会的責任)活動を行う小林製薬(大阪市中央区)から2年前、洋式トイレと床面シートを寄贈してもらった。これに合わせ、排便習慣を確立するため、「早寝早起き朝ごはん」国民運動に「朝うんち」を追加。児童の健康調査に「朝の排便」の欄を加えたほか、登校後に「うんちをしましたか」など担任らがオープンに指導を開始。朝の排便がなかった児童には「いつ行ってもいい」と、トイレに行きやすい雰囲気をつくった。恥ずかしがっていた児童も、やがて「今日はしました」「まだ、していません」とはっきり答えるようになり、周囲から冷やかしを受けることもなくなった。
◆和式が苦手
なぜ、子供たちは学校で排便を我慢するのか?
小林製薬が6月、小学生の保護者412人にインターネットで調査したところ、46・1%が「我慢したことがある」と答えた。理由として、「恥ずかしい」(53・7%)、「和式トイレが苦手」(35・3%)、「トイレが臭(くさ)い」(27・9%)など心理面と環境面の両方が挙がった(複数回答)。
一方、生活習慣では排便について、毎日が51・7%、週5~6回が29・1%で、8割がほぼ毎日。しかし、週3~4回が16・5%、週1~2回以下も2・6%おり、排便に問題があるケースも少なくないと推測される。
また、和式しかない小学校が11%あった。トイレ環境の改善に取り組むNPO日本トイレ研究所(東京都港区)の加藤篤(あつし)代表理事は「学校では和式と洋式の両方ある方がいい。学校でうんちをすることは恥ずかしくないと伝えることも大切。食育とともに排便についても家庭と協力して取り組む必要がある」と指摘する。
◆子供に多い直腸性便秘
「排便外来」のある、さいたま市立病院(さいたま市緑区)の中野美和子・小児外科部長によると子供に多い排便障害は、直腸に便がたまる「直腸性便秘」だ。
排便を我慢し、便がたまりすぎると、子供は「痛い」という恐怖感などで自力で出せなくなる。たまった状態に慣れると直腸の感受性が低下し、より便意を感じにくくなる悪循環に陥る。さらに、悪化すると肛門から便がこぼれ落ちる便失禁を起こすこともある。
排便障害がある児童の場合、和式トイレは苦手▽便が漏れたときに着替えが必要▽便意が突然起こり、我慢が難しい-などの問題があり、小学校入学以降に症状を悪化させやすいという。
中野部長は「排便異常はいつの間にか進行するため、自分では気づかない。気づいても大人には知られたくなくて隠すこともある。排便の自己管理ができるまでは、学校を含めて周囲が環境を整えることが大切」と話している。
(2012.8.24 産経ニュースから転載)